慢性腎臓病(CKD)とは

日本人の8人に1人が罹患する「国民病」
CKD(Chronic Kidney Disease)とは、腎臓の働きが徐々に低下していく病気の総称です。
現在、日本には約1,330万人の患者さんがいると推定されており、成人の8人に1人が該当する、決して他人事ではない病気です。
診断の定義
以下のいずれか、あるいは両方が3ヶ月以上続いている状態を指します。
腎臓の障害がある
尿検査で蛋白尿などの異常がある、または画像診断で腎臓の形態異常がある。
腎機能の低下
血液検査で算出されるeGFR(推算糸球体濾過量)が 60mL/min/1.73㎡未満。
腎臓の5つの重要な役割
腎臓は、腰の少し上あたりの背中側に左右一つずつある、握りこぶしほどの大きさの臓器です。
「尿を作る場所」というイメージが強いかもしれませんが、実はそれだけではありません。
私たちの体を正常に保つための、とても大切な働きをいくつも担っています。
老廃物の排出
血液をろ過し、体に不要な毒素を尿として外に出します。
体液・電解質の調節
体内の水分量や、ナトリウム、カリウムといったミネラルバランスを一定に保ちます。
血圧のコントロール
塩分の排出量を調節したり、血圧を上げるホルモンを分泌して血圧を適正に保ちます。
血液(赤血球)を作る
骨髄に「赤血球を作れ」と命令を出すホルモン(エリスロポエチン)を放出します。
骨を丈夫にする
ビタミンDを活性化させ、カルシウムを吸収しやすくします。
慢性腎臓病(CKD)の症状
腎臓は腎機能がかなり悪化するまで自覚症状がほとんど現れません。
初期
ほぼ無症状。健診の尿検査や血液検査で初めて見つかることがほとんどです。
進行期
むくみ(浮腫)、夜間尿、疲れやすさ、息切れ、食欲不振、皮膚の痒み、貧血症状など。
症状が出てからでは、すでに元の状態に戻すことが難しいケースが多いため、「症状がないうちに見つけること」が何よりも重要です。
検査とステージ分類(eGFR)
当院では、以下の検査を用いて腎臓の「点数」を確認します。
主な検査
尿検査
蛋白尿の有無を確認します。微量アルブミン尿検査は、初期の腎症を見つけるのに有効です。
血液検査(クレアチニン)
筋肉から出る老廃物の量を測ります。この値を基にeGFR(腎臓の機能点数)を算出します。
慢性腎臓病(CKD)の重症度分類
腎機能(eGFR)と蛋白尿の程度を組み合わせて、G1〜G5までのステージで評価します。
G1・G2(正常〜軽度低下)
生活習慣の改善と経過観察。
G3a・G3b(中等度低下)
積極的な治療が必要な段階。合併症のリスクが高まります。
G4(高度低下)
透析導入を回避・遅延させるための専門的な治療が必要です。
G5(末期腎不全)
腎代替療法(透析や移植)の検討が必要な段階です。
慢性腎臓病(CKD)の原因と「心腎連関」
慢性腎臓病(CKD)の原因は一つではありませんが、特に生活習慣病(糖尿病、高血圧)が深く関わっています。
糖尿病(糖尿病性腎症)
高血糖により腎臓の微小血管が破壊されます。現在、透析導入原因の第1位です。
高血圧(腎硬化症)
高い血圧によって腎臓の血管で「動脈硬化」が進み、腎臓そのものが硬く縮んで働きが落ちてしまいます。
加齢
40代以降、腎機能は自然に少しずつ低下します。

心不全・脳卒中との深い関係(心腎連関)
腎臓が悪くなると血圧が上がり、心臓に負担がかかります。 逆に心臓が弱ると腎臓への血流が減り、腎機能がさらに悪化します。慢性腎臓病(CKD)の方は、健康な人に比べて心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患で亡くなるリスクが数倍高いことが分かっています。
当院での治療方針:大切な腎臓を守り抜き、透析のない未来へ
「一度悪くなった腎臓は元に戻らない」と不安に思われるかもしれませんが、決して諦める必要はありません。適切な治療で進行をしっかり食い止め、生涯にわたって透析のない生活を送ることは十分に可能です。
① 薬物療法(最新の治療)
近年、CKD治療は飛躍的に進歩しました。
RAS阻害薬
血圧を下げると同時に、腎臓のフィルターを保護します
SGLT2阻害薬
血糖値を下げるだけでなく、腎保護効果が非常に高いことが証明された新しい選択肢です
MRA(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)
腎臓の炎症や線維化を抑えます。
②食事療法
腎臓への負担を減らすために、以下の管理をサポートします。
減塩(目標 6g/日未満)
血圧管理の要です
たんぱく質制限
ステージに応じ、老廃物(尿毒症物質)を抑えるために調整します
カリウム・リンの制限
数値に応じて、果物や生野菜、加工食品の摂取をアドバイスします
③生活習慣の改善
禁煙
タバコは腎臓の血管を著しく収縮させます
肥満解消
適正体重の維持が腎臓への負荷を軽減します
痛み止め(NSAIDs)の適正利用
市販の解熱鎮痛剤の乱用は腎機能を急激に悪化させることがあるため、注意が必要です
